もともと理系の僕ですが、簿記を独学で勉強しはじめました。
せっかくなので資格試験にも挑戦してみようということで、日商簿記1級にトライしたのですがあえなく撃沈。
調べてみると、有名な日商簿記とは別に全国経理教育協会(通称:全経)が実施する資格試験もあることを知り、全経簿記上級に独学で合格することができました。
どちらも簿記の最高峰の資格ですが、試験には違いや向き不向きがあると感じました。
ということで、日商簿記1級も全経簿記上級も両方とも受験してみて分かった違いや、独学合格を目指すための勉強法についてご紹介します!
日商簿記1級と全経簿記上級
どちらも簿記の最高峰の資格
日商簿記1級の方が一般には知名度が高く、僕も日商簿記の方しか知りませんでした。
しかし、全経簿記上級も日商簿記1級に並ぶ簿記の最高峰の資格です。
“どちらも税理士試験の受験資格になる”ということからそれは明らかです。
また、全経簿記上級は、一般には知名度は低くとも、会計事務所や税理士事務所に勤めている方には当然知名度は高く、一般企業への就職の際にも履歴書に書ける(書いた方が良い)ものです。
日商簿記1級を目指す方は多いと思いますが、以降で違いを説明していきますので、もし自分に合っていると思ったら全経簿記上級にも挑戦してみることをオススメします。
難易度の違い
一般的には、同等か全経簿記上級の方が少し簡単とされています。
日商簿記1級の合格率が約10%、全経簿記上級の合格率が約15~20%であることがその理由とされています。
実際に両方を受験してみた感想としては、上記の説明はちょっと間違っていて、試験内容が微妙に違うので比較は難しいけれど難易度は同等くらいだと思いました。
まず、さまざまなWebサイトで合格率の違いを理由に全経簿記上級の方が少し簡単と言っているのが間違いだと思ったことを説明します。
確かに合格率は違いますが、それは受験生の質の違いが大きく影響しているからです。
簡単に言うと、
- 日商簿記1級の方が知名度が高い→受験生が多い→受験生の質が低い
- 全経簿記上級の方が知名度が低い→受験生が少ない→受験生の質が高い
という構図になっています。
文系の大学生が就職活動で有利になるため、受かればラッキーという感じで日商簿記に挑戦している場合も多いのです。
一方で全経簿記上級の方は知名度が低いことでかえって、本当に簿記を勉強していてどうしてもこの資格を取りたい!という受験生が多いです。
したがって、合格率の違いがそのまま難易度の違いとは言えません。
試験範囲については日商簿記1級も全経簿記上級も同じです。
実際に両方を受験してみて難易度も同じくらいだと感じました。
ただ、試験内容に微妙に違いがあるため、向き不向きがあることは確かだと思いますので、次にそれを説明します。
試験内容の違い
日商簿記1級と全経簿記上級は試験範囲は同じですが、試験内容に微妙な違いがあります。
それは、
- 全経簿記上級の方が理論問題が多い
- 全経簿記上級の方が計算問題が少なく、難易度も低い
ということです。
したがって、
- 理論問題の方が得意・勉強しやすい方→全経簿記上級
- 計算問題の方が得意・勉強しやすい方→日商簿記1級
が向いています。
日程の違い
忘れがちですが意外に重要なのが日程の違いです。
試験日は
- 日商簿記1級:6月と11月の年2回
- 全経簿記上級:2月と7月の年2回
です。
より重要なのは、合格発表はそれから2ヶ月後だということです。
例えば税理士資格を目指す方は申し込みが5月なので、最遅でも全経簿記上級の2月(→合格発表は4月)に合格しないとなりません。
日商簿記1級の11月(→合格発表は1月)の試験に落ちたことが分かったら、すぐに全経簿記上級の2月の受験申し込みをするという使い方もできます。
就職活動は本格的には4月以降ですが、エントリーや履歴書提出は1~3月に始まるところも多いと思いますので、それに間に合わせるのであれば、
- 併願してどちらかを合格する
- 日商簿記1級の6月(→合格発表は8月)
- 全経簿記上級の7月(→合格発表は9月)
- どちらも不合格であったら最遅として
- 日商簿記1級の11月(→合格発表は1月)
という流れで受験する方法もあります。
どちらの資格試験が向いているか?
就職活動等を含め一般的に、日商簿記1級か全経簿記上級のどちらかを取得したい!という方は、ざっくり言うと、文系的な勉強が得意であれば全経簿記上級、理系的な勉強が得意であれば日商簿記1級を受験するのがオススメです。
僕はもともと理系なので、理系的な勉強をしていたのですが
- 日商簿記1級:ギリギリ不合格
- 全経簿記上級:ギリギリ合格
となりました。
日商簿記1級は単純に力が足りず、その後も勉強を続けて全経簿記上級に合格したという流れです。
上記でオススメしていることに反するじゃないかと感じるかと思いますが、詳しく内容を説明します。
実は全経簿記上級では、計算問題はほぼ完璧だったにも関わらず理論問題がほぼ全滅という状況でした。
試験終了直後は計算問題がほぼ完璧に解けたのでこれは合格だろうと思ったのですが、自己採点してみると理論問題がほぼ空欄だったせいで、合格点には届かないという結果でした。
しかし傾斜配点があるおかげで、実際の採点では合格していました。
理系的な勉強のみでは全経簿記上級はこのような状態になると思いますので、傾斜配点によっては合格したり不合格だったりとかなり際どいと思います。
そのため、全経簿記上級に合格するには理論問題を解けるように文系的な勉強をした方が近道です。
次に、税理士試験の受験資格のために簿記の資格が必要だという方は、基本的には全経簿記上級をオススメします。
それは税理士試験の必須科目である”財務諸表論”は理論問題が50%であり、理論問題の勉強は避けて通れないからです。
理論問題の勉強を行って、全経簿記上級→税理士試験”財務諸表論”と進むと無駄がありません。
ただし本来、税理士試験の受験資格を得るためなのであれば、日商簿記1級と全経簿記上級のどちらかにこだわる必要は全くなく、むしろ、両方とも受験することをオススメします。
照準を定めた試験に絶対に合格する保障はありませんし、試験当日は体調不良やケアレスミスが起こるかもしれません。
あくまでも目指す税理士試験の日程に整合するように、余裕を持って日商簿記1級と全経簿記上級の両方を受験していく方が良いと思います。
受験料や過去問題集にお金はかかりますが、それは仕方ないと割り切りましょう。
独学合格を目指すための勉強法
独学で合格するために使用した教材をご紹介します。
僕の場合は、日商簿記1級のために教材を揃えて勉強し、全経簿記上級は過去問題集のみで勉強しました。
試験範囲は共通なのでこれでギリギリ十分なのですが、上記の通り全経簿記上級対策として理論問題も勉強しておけば良かったと思ったのでそれについても説明していきます。
日商簿記1級
基本的な勉強
基本的な勉強にはネットスクールのサクッとうかるシリーズを使いました。
このシリーズは、
- 商業簿記・会計学
- テキスト(1、2、完成編)
- トレーニング(1、2、完成編)
- 工業簿記・原価計算
- テキスト(1、2、完成編)
- トレーニング(1、2、完成編)
で、合計12冊の構成です。
最初は”12冊は多いな”、”どこか省略できないのかな?”と思いましたが、結局は全部やる以外に道はありませんでした。
気になるのは“サクッとうかる”と言っているけどこれで十分なの?という点だと思いますが、このシリーズをちゃんとやれば合格点には届くと思います。
安心してシリーズ全巻揃えて、しっかりと勉強してください。
過去問題集
次に購入したのがこの過去問題集です。
はっきり言ってこれは失敗でした。
なぜかと言うと、”だれでも解ける”というところに重点が置かれているので解説がやたら詳しくて、問題数が非常に少ないです。
個人的には、解説は”サクッとうかる”シリーズで確認すればいいので、過去問がもっとたくさん掲載されているものにすれば良かったと思いました。
予想問題集
上で紹介した過去問題集が失敗だったので、試験日程に迫ってきたこともあり、予想問題集に手を出してみました。
評価が難しいのですが、とにかくこの予想問題集は難易度が高すぎました。
この予想問題集をこなしていくと難しすぎてこれはもう日商簿記1級は全然無理なんじゃないかと落ち込むレベルでしたが、実際に受けた日商簿記1級試験は驚くほど簡単でした(でもギリギリ落ちました・・・)。
結果論ですが、この予想問題集をやるくらいならもっと基礎的な問題集をやれば良かったと思いました。
おそらくこの予想問題集をきっちりやれば、本番の日商簿記1級試験では9割近い得点になると思います。
それくらい難しいです(かつ問題量が多い)。
どうしてもこの日商簿記1級の試験に合格しなければならない!という追い詰められた人にはオススメですが、”ギリギリでも合格できればいいし、不合格なら次も受ければいいよ”というくらいの人には逆効果だと思います。
全経簿記上級
基本的な勉強は日商簿記1級と同じでOKですが、過去問題集は必須だと思います。
過去問題集
上で説明したような日商簿記1級での反省から、全経簿記上級は単純な過去問題集を買って勉強しました。
個人的にはやはりそれが王道で良かったと思います。
解説も必要十分ですし、全経簿記上級を受験するにあたって必須だと思います。
理論問題
全経簿記上級の理論問題は全く勉強しなかったので、試験では全く書けませんでした。
それでもギリギリ合格はできたのですが、現実的には理論問題を勉強した方が合格できる確率はぐっと上がると思います。
特に税理士試験を目指す方であれば、税理士 財務諸表論 理論答案の書き方をオススメします。
試験が違うのに役立つか?と思われるかもしれませんが、試験範囲はほぼ同じなので大丈夫です。
後に税理士試験を受けるのであればいずれにせよ購入すべきなので、先に買ってしまっても無駄になりません。
まとめ|自分にあった試験を受験しよう!
独学で簿記の勉強を始めて、日商簿記1級には落ちたものの全経簿記上級に合格した僕が、試験の違いや勉強法について実際に感じたことをまとめてみました。
基本的には、理系的な勉強が得意なら計算問題の多い日商簿記1級、文系的な勉強が得意なら理論問題の多い全経簿記上級をオススメします。
ただしその先の税理士試験を目指すのであれば理論問題は避けて通れないので全経簿記上級をオススメしますが、日程も関わってくるので両方受験する気で勉強するのが最適解だと思います。
勉強法については失敗したな~と感じた問題集もありましたが、これくらい勉強すれば合格ラインには届くという内容は分かっていただけると思います。
日商簿記1級も全経簿記上級も、簿記資格では最難関・最高峰ですので独学は大変ではありますが、紹介したテキストと問題集をきっちりやれば合格できます。
その後、税理士試験の簿記論と財務諸表論に独学合格しました。