令和3年度(第71回)の税理士試験において、簿記論と財務諸表論に独学合格しました。
もともとは理系の僕ですのでそもそもの受験資格がなく、日商簿記1級・全経簿記上級を取得するところから始めてずっと独学で合格を勝ち取りました。
ということで、日商簿記1級・全経簿記上級を取得済み(または同レベルの力がある)の方向けに、税理士試験の簿記論と財務諸表論に独学合格するための全てを書こうと思います。
僕の場合は実務経験2年も並行しているので税理士事務所に勤めながら、土日中心で勉強しました。
やり方さえ分かれば、働いていても独学合格できると思いますので、これから挑戦する方のために僕が考えたこと・やったことをご紹介します。
まず言いたい!簿記論と財務諸表論は同時に受けるべし!
勉強時間がないから1科目?
独学合格を目指すにあたってまず言いたいのが、簿記論と財務諸表論は絶対に同時に受けることをオススメしたいということです。
理由は2つあります。
- 両科目の内容はかなり似ているので、同時に勉強した方が効率が良い
- 財務諸表論は実力通りの結果が出やすいが、簿記論は極論すると最後は運なので1科目に絞っても受かるとは限らない
勉強時間がないから1科目に絞るという話も聞きますが、それで1科目が不合格だったらまるまる1年消費してしまうのはもったいないと思います。
両科目の内容は似ている
両科目を受験して同時合格しましたが、未だに両科目の勉強範囲ってどこが違うのか分かっていません。
これは僕がテキストに関しては日商簿記1級・全経簿記上級のものしかほぼ使ってないということにも多分に影響されていると思いますが、結局は合格できてしまっているので、本当にほぼ同じと思ってOKなのだと思います。
勉強範囲は同じですが、簿記論は計算100%、財務諸表論は理論50%計算50%という割合だけが違うという認識でOKなんです。
そして財務諸表論の理論の勉強は、財務諸表論の計算はもちろん、簿記論の計算にも好影響(好循環)をもたらします。
2科目を受けるから2倍大変ということは絶対になく、感覚的には1.2~1.3倍くらい大変というくらいだと思います。
財表は良い、だが簿記論はヤベェ
どうしても自信がないから1科目にしたいというのであれば財務諸表論をオススメします。
なぜかというと財務諸表論は実力通りの結果がほぼほぼ出ると思いますし、合格しやすいのも財務諸表論だと思います。
で、問題は簿記論なんですよ。
過去問を取り組めば分かると思うのですが、大問1と2って運ゲーじゃね?というのが僕の感想です。
勉強が足りないんだよと言われればごめんなさいするしかないのですが、大問1と2は
- 知らなかったら無理
- 閃かなかったら無理
- いかに簡単な問題だけを拾って得点するか勝負
という感じです。
したがって、簿記論を合格確実ラインまで毎回行くのは困難であり、簿記論のみの受験はオススメしません。
2科目同時受験して、財務諸表論は合格狙い、簿記論はできれば合格したいな・・・くらいな気持ちで臨みましょう!
合格のカギは大問3で共通!
簿記論と財務諸表論を同時合格する最大のポイントはなにか?
それは大問3を勉強することです。
僕も勉強を始めた頃に色々なサイトを見て回りましたが、簿記論も財務諸表論もとにかく時間がないから簡単なところを拾って得点しよう!という話が多いです。
大問3もそういう論調で、予備校の先生すら全部解くのは無理みたいな話まで見かけました。
そこまで言われると、8割解いて8割得点して合計64%取れれば十分なのかな?と思っていましたが、これは大きな誤解なので下で詳しく説明します。
簡単に言うと、勉強していくなかで気がついたのは、大問1と2での得点は難しい(運ゲー)なので、大問3を得点源にすることこそ合格への道だ!ということです。
具体的にどう攻略する?簿記論と財務諸表論の試験対策
得点配分・時間配分
税理士試験の合格点は60点ですが、これは絶対値ではなく、傾斜配点で調整されていると言われています。
難しい問題(正解者が少ない問題)は0点になり、簡単な問題(正解者が多い問題)は数点になる調整がされていると思われます。
余談ですが、この調整って偏差値とは真逆の考え方なので、高校や大学受験の経験からすると不思議ですよね。
難しい問題が解ける方がすごいと思うのですが、そもそも税理士は実務家であり、難しい問題を解けることよりもみんなができることをミスしないことの方が重要ということなのでしょうね。
さてさて本題に戻りまして、合格点の60点をどう目指すか。
ズバリ、大問3で40点、大問1と2で20点!
これが僕の目指した数字です。
※真実はどうか分かりませんが、大問1と2で50点、大問3で50点は傾斜配点でもブレないという前提です。
大問3は勉強すれば確実に得点できるようになりますが、大問1と2運ゲーなので、合格を目指すにあたってはこの数字が現実的だと思います。
ついでに時間配分としては、
簿記論は、大問1と2で50分、大問3で70分です。
財務諸表論は、大問1と2で30分、大問3で90分です。
時間的にはどちらもキツイですが、大問1と2は時間切れで切り捨てたとしても、大問3にこれくらいは時間をかけていくべきだと思います。
簿記論・財務諸表論の大問3
大問3は決算整理型の問題で、財務諸表論の方が書くボリューム(回答数)が多い傾向にあります。
その分だけ財務諸表論は大問1と2に時間がかからないので、大問3に割ける時間を多くして対応します。
合格を目指す最大のポイントである大問3は40~45点を目指します。
8割解いて8割得点して合計64%取れれば十分なのかな?と思っていましたが、これだと全く足りません。
まずどれくらい解くか?
ほぼほぼ全部解きます。
予備校の先生すら全部解くのは無理みたいな話もありましたが、さすがにそれはないと思います。
ちゃんと勉強すれば簿記論70分、財務諸表論90分で全部解くことはできます。
ただ、あえて手を出さない項目があって、それは自分のこれまでの回答を使ってさらに回答するもの、例えば当期純利益や繰延税金資産あたりです。
ここは正解にたどり着くのが難しい上に、ほとんどの人が正解できないので自分だけが解いたとしても傾斜配点で得点にはならないからです。
大問3はあえて解かない問題はあるけれども、時間内にほぼほぼ解いて、大問1と2の見直し(再挑戦)はするよってくらいなイメージです。
なのでどのくらい解くかというと傾斜配点を見越した状態でほぼ100%になるんです。
そのうち8割を正解して、40点を獲得すれば合格できたも同然だと思います。
ここまで頑張りましょう!
簿記論の大問1と2
これまで散々に書いてきましたが、簿記論の大問1と2は運ゲーです。
簡単な問題、できる問題を必死に拾って、20点を奪い取りましょう。
大問1と2にこだわって時間を使うのは得策ではありませんので、時間配分を厳守し、大問1と2ができなくとも大問3に時間をかけて得点しましょう。
難しい問題が出ても焦らずに、「あ、これはみんな解けないわ!次行こ!」くらいのメンタルが重要になってきます。
財務諸表論の大問1と2
誤解を恐れずに言えば、財務諸表論の大問1と2の理論問題において、記述問題は全部空欄でもいいと思います。
もともと理系の僕なので丸暗記というのがどうも性に合わないというのもあったのですが、大問1と2は選択問題も多いので、そこで得点できれば十分だと思います。
※選択問題の方が正解が簡単で、記述は難しいという前提で言っています。
記述問題は完答できる人は少ないでしょうし、大抵の人は部分点しか取れないと思います。
そこを完璧に勉強するよりも、選択問題さえ取れる力で必要十分で、あとは大問3対策に当てたほうがコスパが良いと思います。
選択問題を取れる力があれば記述問題も全部空欄になる訳はなく、いくつかは部分点狙いでキーワードを入れた文くらいは書けるようになるので、それくらいで十分なのかなあと。
この辺は人それぞれのポリシーでもあるので、僕はそう思いますということでご容赦ください。
実際どうだったの?令和3年度試験編
結果
過去問をやっていただければ分かると思いますが、令和3年度(第71回)については、簿記論が難しく、財務諸表論は比較的易しいという感じでした。
僕の結果は以下の通りです。
科目 | 大問1 | 大問2 | 大問3 | 自己採点計 | TAC予想 | 大原予想 |
簿記論 | 7 | 15 | 31 | 53点 | 47点 | 46点 |
財務諸表論 | 17 | 9 | 41 | 67点 | 60~69点 | 56点 |
TAC予想と大原予想は合格ボーダーラインとされた点数です。
大原でもTACでもボーダーラインは超えていたので大丈夫っぽいかな?と思ってはいたのですが、結果はしっかり2科目とも合格でした。
両社の出すボーダーラインはかなり正確らしく、ボーダーラインとされる点数を2~3点でも超えていれば(自己採点がミスっていない前提ですが)合格になるようです。
両社とも合格確実の点数予想も出しており、これを超えればもちろん合格なのですが、超えなくても合格する可能性は高いので心配しなくてもいいですよ。
僕の得点からも、これまで書いてきたように、
- 大問3を得点源にする
- 大問1と2は取れるところを得点する
という戦略の結果が出ていることが分かると思います。
簿記論は大問1が難しくてほぼできず、大問2で点数を拾って、大問3もなんとか及第点という感じでしょうか。
財務諸表論は大問2が低いですがこれは記述部分が正解かどうか(部分点がもらえるのか)不明なため自己採点では加点していないからです。大問3がちゃんと40点を超えたので合格に自信をもっていました。
試験当日の心境
今回は簿記論が難しすぎたので、試験を始めたとき大問1が難しすぎてもうダメじゃないか?と思いました。大問2に入っても自信がなかったのですが、簡単なところだけ書いてあとは大問3勝負だ!と気持ちを奮い立たせて試験を続けました。
試験を終えたときにはこれは無理だろうなあと思ったのですが、Twitterなどでも簿記論が難しすぎるというコメントが多く、これは仕方なかったんだなと気持ちを切り替えて財務諸表論に臨みました。
逆に財務諸表論は簡単に感じたので、試験を終えてこれは大丈夫だろうと安堵の気持ちで帰宅しました。
Twitterを見ていると気持ちを切り替えられなかった人もいたようなので、2科目受験の方はできる限り引きずらないメンタルの工夫をした方が良いと思います。
これだけやればOK!簿記論と財務諸表論のおすすめテキスト・問題集
取り組んだテキスト・問題集はそんなに多くはありません。
順番にご紹介していきます。
テキスト
日商簿記1級・全経簿記上級を取得済みであれば、ほとんどそれで代用可能だと思います。
僕は、問題を解いていて理解ができていないと感じた部分について、日商簿記1級・全経簿記上級のテキストに戻って復習していました。
1つだけ必要なのは、財務諸表論の理論のテキストです。
→最新版はAmazon検索ページで確認してください。
基礎編だけで良いのかな?とも思ったのですが、上でも書いたように個人的には記述問題を完答するような完璧に勉強するよりも、選択問題さえ解ければ十分というスタンスだったので、結果的に基礎編だけで良かったと思います。
このテキストにしても、丸暗記するというのではなく、理解を深めるという意識で使いました。
そうすると簿記論や財表の計算でなんとなくやっていた解法が、理論的なバックボーンを理解して腑に落ちるという感覚があります。
問題集
オススメする順で紹介します。
まず絶対にやった方が良いと思うのは、会計人コースBOOKの直前予想問題集です。
→最新版はAmazon検索ページで確認してください。
こちらは毎年4月に発売されるので、最新版が出たら即購入しましょう。
最新版だけでなく、1年か2年古い版もメルカリなどで購入することをオススメします。
日商簿記1級・全経簿記上級を取得済みという前提であれば、基本的に出題範囲の勉強は一通り終わっており、あとはいかに税理士試験レベルの実践を積むかが勝負だと思います。
直前予想問題集はその意味でうってつけの問題集であり、4~5回分の実践的な問題が収録されているのでコスパも良いです。
次にオススメするのは、スタディング 税理士講座の直前対策講座です。
問題集だけでなく、テキストに戻って勉強もしたいという方は簿財2科目コースでも良いと思いますが、問題集だけでいいなら直前対策講座でOKです。
しかもこちらは合格すればお祝い金が1科目につき1万円というキャンペーンもやっているので、合格すれば実質無料(というよりプラス)という破格なものです。
え?これ直前対策講座でもお祝い金もらえるの?と不思議に思ったのですが、ちゃんともらえました!(ありがとうございます。引続き税法科目でも利用します)
スタディングの直前対策講座には過去問3年分+予想問題6回分が収録されているので、過去問の問題集を買う必要もなくなります。
1つだけデメリットはWeb上でPDF公開なので、自分で印刷する必要があるということです。
僕の場合は4アップのA3にして紙面を節約して、コンビニでプリントしました。
上にあげた問題集を2~3周すれば、合格できる実力はつくと思います。
あとは僕がやってみたけどオススメするか微妙なものとして、TACの全国公開模試があります。
なぜ微妙かというと、1科目4,000円とべらぼうに高いんですよ。
1回分の実践問題と考えれば高すぎるのですが、自分の実力が分かるという意味や、受験生の多くが受けるので本番で似た問題が出たときに正解率が高まってしまう(自分ができないと置いてけぼりになる)という意味で、受けざるを得ないという感じです。
自分がもう一度受けるかというと、うーん正直いらないかなあというくらいのイメージです。
お金を気にしないなら受ければいいですし、2科目8,000円が高いと思うなら受けなくていいと思います。
ということで、会計人コースBOOKの直前予想問題集とスタディングの直前対策講座をしっかりやればOKというのが結論です。
まとめ
税理士試験の簿記論と財務諸表論に独学合格するための全てを書きました。
僕の実体験が全経簿記上級に合格してからの挑戦だったので、テキスト部分のアドバイスはほぼないのですが、同じような境遇の方には試験対策と問題集部分に関しては絶対に参考になると自負しています。
ぜひぜひ簿記論と財務諸表論の2科目同時合格を目指して頑張ってください。
僕も次の税法科目に向けて頑張りたいと思います。