「謎の独立国家ソマリランド」高野秀行著の感想:旅好き・未知好きにオススメ!【ネタバレ】

2013年に発売された、ソマリランドおよびソマリアという国に迫るノンフィクションです。

著者は早稲田大学探検部出身という高野秀行。

ノンフィクションなのだけど、ヘタな小説を読むより、面白く読めます。まさに事実は小説より奇なり。東南アジアやアフリカ、南アメリカなどの発展途上国を旅することが好きな人や、未知のことや場所が大好き!という人にはオススメです。

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誰も知らないソマリランド

この本を一言でいうと、高野秀行氏のソマリアへの冒険です。

ソマリアおよびソマリランドという国のことを、ほとんど誰も知らない。というのが高野秀行氏を旅に駆り立てます。

誰もやっていないことをやる。自分の目で見る。ことがモットーで、危険な国と言われているソマリアへと向かうのです。

旅の概要

2009年と2011年の2回に分けて旅が綴られます。

2009年の旅は、本のタイトルの通り、ソマリランドへの旅です。謎の未確認国家・独立国家であるソマリランドがどのような所なのかを知るためにソマリランドへと向かいます。

ソマリランドはソマリアの一部であるというのが国際的な見方であるのですが、ソマリランドに住む人は、ソマリランドが国としてソマリアとは別であると思っています。ビザのようなものを大使館のような所で発行してもらったり、独自通貨が流通していたりするところは興味深いです。

これは植民地時代において、ソマリランド=イギリスの植民地であり、その他の地域=イタリアの植民地であることが根拠となっています。しかも、アフリカでは植民地時代の国境が今も有効である(変えてはならない)というルールがあるそうで、そのルールに基づいても正しいというロジカルな主張でもあります。

2011年の旅は、ソマリランド、プントランド、ソマリア南部と、ソマリア全域への旅です。前回の旅でソマリランドについてある程度知ることができた著者でしたが、他の地域にも行かないと本当にソマリランドを知ったことにならないのではないかとの思いから、2度目の旅が行われます。

これは正しいことだったようで、他の地域ではソマリランドなんか国として認めないという意見も聞くことができたり、プントランドやソマリア南部の危険さを経験したからこそ、ソマリランドの平和さがいかに奇跡的なことなのか実感できたりしました。

地上のラピュタ:ソマリランド

著者は、奇跡的に平和な国となったソマリランドを指して、地上のラピュタと呼びます。

ソマリアの他の地域は内戦等で危険な状況にありながら、ソマリランドだけは武装解除して平和になり、民主的な選挙が行われています。なぜそんなことが可能だったのか?に迫っていきます。

面白かったのは、ソマリアの中にあるソマリランドだからこそ良いのだという話です。

国際的に独立国家として認められると、様々な援助が入ってきます。それに伴って汚職や癒着が始まり、諍いが起こることになります。対して、独立国家として認められていないソマリランドには何も援助が入ってきていません。援助という旨みもなく、元々豊かな土地でもなく、資源もない。ソマリランドには利権が全く無いのです。それが結果として平和に繋がっているということです。

そんなに何も無いのにソマリランドの人々はどうやって暮らしているのか?

まさかの、海外からの家族・親戚からの仕送りだと言うのです。ソマリランドに限らずソマリア人というのは氏族・血縁の強い絆があり、海外に出た人たちがソマリランドの人たちに仕送りをするのが普通のようです。

当のソマリランド在住のソマリランド人は午前だけ働き、午後はカートと呼ぶ一種の麻薬のような葉っぱを食べて過ごします。羨ましいような羨ましくないような・・・。とにかく日本では考えられません。

カート

カートの葉には、覚醒作用をもたらす成分が含まれており、葉を噛むことで高揚感や多幸感が得られるそうです。イスラムでは酒が禁止されていることもあって、カートを食べて宴会するということが一般的な国も多いようです。ソマリランドでは隣のエチオピアから輸入しています。

著者もカート宴会に毎日のように参加し、覚醒作用を得て、現地の人たちとコミュニケーションし、見識を深める場面が幾度となく登場します。先進国では非合法とされているカートを、こんなに食べて大丈夫かと思うほど。もっとも、著者にとっての副作用は便秘になることぐらいのようです。

ソマリア三国志

1回目の旅である程度ソマリランドについて理解し、日本へ帰国したのですが、著者は2回目の旅にでます。今度はソマリア全域を見て歩こうというのです。ソマリアは3つの部分に分かれており、三国志のような、日本の戦国時代のような状況です。

ソマリランドは平和で安全でしたが、他の2つの地域は護衛の兵士をつけないと出歩けない危険地帯です。

海賊国家プントランド

ソマリアとイエメンの間のアデン湾で、海賊が出没し、外国船を誘拐しては身代金を得ています。プントランドはソマリランドと同様に独立国家の体裁を取りつつも、ソマリアの一部であるという中途半端な位置付けにあります。

国家というなら海賊を取り締まるのかというとそうではなく、むしろ逆に海賊と被害者国家の間に入って事件を解決し、手数料を抜いている(身代金の一部を貰う)という呆れて物が言えない国家です。

「海賊を取材したいのなら、海賊を雇って船を襲わせればいいんだよ」と、プントランドのコーディネーターが言い放ち、実際にいくらかかるか計算するくだりは、恐ろしさを忘れて笑ってしまうほど面白いです。

これは冗談ではなく、本当にお金さえあれば雇えるようです。そして身代金受取に成功すれば、この件のオーナーとして利益を得られます。まさにビジネスになっているのです。

内戦が続く南部ソマリア

次にさらに危険な南部ソマリアへと向かいます。ここでは内戦が続いており、リアル北斗の拳と呼んでいます。ここでは現在も、暫定政権とアルシャバーブ(イスラム国のような過激派)との戦いが続いています。

ここで著者(と読者)が驚くのは、そんな内戦状態にも関わらず、都会であることです。やはり腐っても首都ということなのか、そこに住む人も都会人なのです。オシャレな服(イスラム圏とは思えない服も売っている)だったり、人の話をちゃんと聞いて、お金ではなく信頼で動いたりするなど、ソマリアの他の地域にはない都会的なストーリーが綴られます。

それでも内戦が続いていて危険極まりないというところが不思議です。

ソマリアの混乱の原因

ここまで来て、ソマリアがなぜ三国志のような、日本の戦国時代のような状況なのかが明らかになってきます。

ソマリアは氏族単位で判断がなされています。同じ民族でも氏族が違うと対立することになります。まさに日本の戦国時代さながらです。現代に未だにこういう状態の場所があるのかと思いました。

ハイパー民主国家:ソマリランド

そして2度目の旅の最後はソマリランドです。

ソマリ人、ソマリランドを深く理解するにつれて、もしかするとソマリランドは西欧民主主義を超えた存在であるのではないかと考えるようになります。

例えば、ソマリランドは、氏族の投票で選ばれる衆議院と、氏族の長老たちで作られる貴族院の2院制です。民主的な政治家に政治を任せつつ、長老たちがそれを監視するという形になっています。貴族院で否決されれば法案は通りません。

日本でも一応は衆議院・参議院という2院制となっていますが、衆議院と参議院の議員に違いを感じるでしょうか?少なくとも私はどちらも同じような議員であるとしか思えません。さらに参議院で否決された法案も、衆議院で2/3以上の多数で可決すれば通ります。結局、衆議院が優越です。それを聞いたソマリランド人は「それでは意味がない」と言います。その通りです。

まとめ

世界は広い。です。

「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをやり、それを面白おかしく書く」がモットー。ということで、旅好き、未知のこと好きの人は、分厚い本作も楽しく読めると思います。

しかも、どうせ発展途上国でめちゃくちゃな国だろう・・・と思ったら裏切られます。その政治の高度さや鋭い見解に、はっとすることもあると思います。

Amazonのレビューもかなり好評のようです。↓からどうぞ。

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