「総理」山口敬之著の感想:下手な小説より、よっぽど面白い政治群像劇【ネタバレ】

山口敬之著「総理」

幻冬舎の単行本「総理」。話題となっている本です。

政治や総理というととっつきにくい印象ですが、エンタメ性が高い群像劇のようで非常に面白く、一気読みしてしまいました。

著者である山口敬之氏は元TBSの現フリージャーナリストです。やはりジャーナリスト気質が強く信念があるとサラリーマンでは収まらないようです。まえがき部分でも新人の頃に命を張って納めた映像に対して、上層部からなぜそんな危険な場所に行っているんだと叱責されたことに対して不満を持っているようでした。危険できわどいネタほど、ジャーナリストとして世の中に伝えるべきであるのに、メディア企業としては報道しにくいというジレンマに嫌気が差してしまうようです。

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「総理」という本の目的

「総理」では主に、第1次安倍内閣で安倍首相が辞職した2007年以降の、安倍首相とその周辺人物を描いています。著者はこの本を書いた目的として2点あげています。

  1. 山口氏が至近距離で目撃してきた安倍晋三と安倍政権のキーマン達の発言と行動をつまびらかにし、読者に、首相の仕事、安倍晋三という人物、安倍政権の運営について広く知ってもらうこと。それにより、今後の首相に相応しい人物像、ポスト安倍に誰を選ぶべきかを考える一助とすること。
  2. ジャーナリズムの果たすべき役割を考える材料を与えること。つまり、山口市は「政治家に肉薄した記者が政治中枢における目撃と体験を公開して政治のリアリティを伝えること」を是だと考えているが、一方で取材対象との距離が近い=不適切とする風潮があるため、読者にジャーナリストの役割を判定してほしいということ。

1点目を例として取り上げつつ、普遍化して2点目を考えてほしいということのようです。とはいえ、1点目の例が面白すぎるので、その意味で捉える人の方が多いと思います。2点目は本来であれば皆が考えることでしょうが、現実的には、ジャーナリストやメディア関係者の人、および将来目指す人が考えることになると思います。

「総理」の主な内容

少々ネタバレも含みますが、目次にそって内容をご紹介したいと思います。

第1章 首相辞任のスクープ

2007年9月の第1次安倍内閣で安倍首相が病気で辞任したときをスクープしたこと。そこに至るまでの安倍首相や麻生さん、与謝野さんなど周囲の人の動向を書いています。

第2章 再出馬の決断

盟友であった中川昭一氏の急死。震災の発生と被災者支援。この2点から安倍晋三が再び首相を目指す決意をしていく様を書いています。この部分はこの本の中で最も感動的な場面となっています。

それに加えて、菅さん(現官房長官)の登場により、安倍首相の返り咲きが描かれます。官房長官といえばよくメディアに対して会見しているので目にする機会も多いですが、具体的に何をやっているか知らない人も多いと思います。菅さんという人物像、そして現在担っている役割を知るという意味でも本章はとても興味深いです。

第3章 消費税をめぐる攻防

民主党時代に決められた8%への増税と、10%への増税に関して、安倍首相と財務省の攻防を書いています。

消費税増税といえば長年、財務省の悲願です。一方で、政治家としては増税は人気が落ちることは必至であっても状況を考えて増税を決断することもあれば、総合的に勘案して先延ばしにすることもあります。あの手この手の財務省に対して安倍首相がどのように対峙していったかが分かります。

また、財務大臣である麻生さんとのやり取りも面白く、かつ、麻生さんの格好良さが存分に出ています。安倍首相の祖父である岸信介、麻生さんの祖父である吉田茂の両人も元首相です。そのような境遇・因縁である安倍首相と麻生さんの絆の深さを感じます。

第4章 安倍外交

日米外交について安倍首相のスタンスを書いています。内閣支持率は外交でしか上がらないと言われているほど、外交は国民の注目点であり、批判と賞賛が大きいものです。民主党時代にアメリカから、オバマ大統領から見限られた日本の外交ですが、安倍首相はハッキリとNOと言い、一方でコネクションの作成に奔走している様が描かれます。

第5章 新宰相論

これまでの見てきた安倍首相から、宰相=首相には確かな国家像(理想・信念)が求められるようになった。これがポスト安倍の新宰相にも求められることだと結論付けられます。目的に対するまとめになっている章です。

個人的な感想

とにかく面白かったです

山口氏が、安倍首相と麻生さんの間の伝令役になっていたりするのは、本当に?!(本当なのでしょうが)と思ってしまいますが、政治の裏舞台のリアリティを感じ、下手な小説よりワクワクしました。岸信介と吉田茂の関係性と、孫同士である安倍晋三と麻生太郎の物語となるとまさに事実は小説より奇なりといった様相です。

現政権で活躍している人達が出てくるので親近感があります。あの人ってこういう人なんだと思ったり、麻生さんが印象通りの人だったりと。

そして、安倍首相がこれまでになく長期政権を維持していることが腑に落ちると思います。アメリカ大統領の任期が4年(2期8年が一般的)で長期に渡ることをはじめとして、外国に比べると日本は首相がコロコロと変わってきました。しかし、色々な改革や外国との信頼関係を進めていくにはやはり4年程度の長期政権である方が良いと思います。実際に安倍首相は、この長期政権の間に、これまで散々棚上げされてきた課題をいくつも進めています。

ということで、現在の政権について理解を深めたい方、安倍首相・麻生さん・菅さんについて知りたい方、政治をめぐる群像劇に興味惹かれる方、ジャーナリストやメディアを目指す方にとっては、総理 (幻冬舎単行本)おすすめです

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