「銃・病原菌・鉄(上)」ジャレド・ダイアモンド著の感想:歴史の授業をやめて本書を読ませるべき【ネタバレ】

2000年に発売されて結構なベストセラーとなった本書。文庫本は2012年の発売です。

紀元前の歴史については、色々なゲームのネタ元(Age of Empireシリーズや、Battle-Lineなど)になっていたりして興味はあったのですが、学ぶ機会はほとんどありませんでした。

学校の歴史の授業でも4大文明の名前と場所を覚えて終わり!とかではないでしょうか。今思うと名前と場所を覚えるだけっていうのはただの作業でしかなく、歴史を学ぶという感じは全くしないですよね。

ということで、歴史を学ぶため、今更ながら「銃・病原菌・鉄」を読んでみましたのでご紹介します。

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「銃・病原菌・鉄(上)」という本の目的

現代社会はアメリカ・ヨーロッパなどの先進国が中心となっています。

少し遡るとヨーロッパが大航海時代に、(ヨーロッパ人にとっての)新大陸を発見し、そこを植民地化しました。それが現代の状況に繋がっていると言えます。

逆に言えば、アメリカ先住民や、南米アステカ帝国・インカ帝国や、オーストラリアのアボリジニーたちは、ヨーロッパを発見して植民地化する、という歴史にはなりませんでした。

そのような状況を生み出した原因は何か?に迫るのが本書の目的です。

題名が示すのは直接的な原因

上記の疑問についての直接的な答えが、題名にあるように、「ヨーロッパ人が持っていた銃、病原菌、鉄であった」ということになります。

本書の良いところは、さらに問題を掘り下げるところです。

つまり、ではなぜ、ヨーロッパ人は銃と病原菌と鉄を持ち得たのか?という疑問に迫ります。

逆に言えば、なぜ、アメリカ先住民や、南米アステカ帝国・インカ帝国や、オーストラリアのアボリジニーたちは、銃と病原菌と鉄を持ち得なかったのか?という疑問です。

本書をオススメしたい人

学校の歴史の授業はとかく暗記ばかりです。年号を1年の違いもなく、名称を一文字の違いもなく覚えることは、果たしてそこまで大切なのでしょうか?

本書のように、歴史の流れを学び、その中で新しい発見に気付いたり人類としての反省をしたり、論理的な思考力を身につけたりすることの方がよっぽど大切だと思います。

一方で、何事でもそうですが、本書だけを盲信するというのも危険です。様々な情報にあたり取捨選択、正誤を見極めるということも必要だと思います。

ということで、以下に挙げる方々には本書をオススメします。

  • 中学生・高校生(学校で習う歴史だけが、歴史を学ぶことではない!)
  • 紀元前の世界史に興味がある
  • 人間、動物、植物の進化(環境適用)に興味がある
  • 謎に迫る、原因と結果を見極める、ミステリーなどが好きである

「銃・病原菌・鉄(上)」の主な内容

プロローグ ニューギニア人ヤリの問いかけるもの

著者のジャレド・ダイアモンドはアメリカの白人です。進化生物学や生物地理学を研究対象としていて、ニューギニアでの鳥類生態学の研究も行っているそうです。

そんな研究中のニューギニアでの出来事が本書の目的に繋がっています。

ニューギニアで出会った政治家のヤリさんからこう尋ねられます。

「あなたがた白人は、たくさんのものを発達させてニューギニアに持ち込んだが、私たちニューギニアジンには自分たちのものといえるものがほとんどない。それはなぜだろうか?」

そして著者がまず先に述べているのが、ヨーロッパやアメリカの白人が人種的に優れている(賢い)という訳ではなく、ニューギニア人が人種的に劣っている(賢くない)という訳ではないということです。

人種の違いは上記のヤリの疑問の答えにはならないということです。直接的な要因は、題名通りの「銃・病原菌・鉄」ですが、それよりももっと深く追求していくのが本書です。

脇道にそれますが、ここで1つ面白い考え方がありました。

ヨーロッパなどの先進国では、社会の仕組みがしっかりと出来上がっているため、大抵の場合は子孫を残すことができる。そうすると賢いか賢くないかに関わらず子孫が生まれる。

一方で、ニューギニアなどの国では、社会の仕組みが未発達であり、自然との戦い、病気との戦い、部族間の衝突などの過酷な状況であるため、賢くないと生き残れない、そうすると賢い人だけが子孫を残せる。

こう考えるとヨーロッパなどの先進国より、ニューギニアなどの国の人達の方がポテンシャルは高いのではないかと述べています。ただし、その後の生活環境・教育水準によって違いはうまれてくるとも。

第1部 勝者と敗者をめぐる謎

ポリネシアの島々に住む部族の戦いをまずは材料にしています。

ある部族Aは農業を行い、食料生産・備蓄を発展させることで人口を増加させるとともに農業に従事しない専門職を生み出しました。専門職とは兵士であったり、道具を作る職人であったり、政治家であったりする人達です。

一方で別のある部族Bは、山の恵み、海の恵みにより、豊富な食料資源を持っていました。農業を始める必要性はなく、狩猟採集民として暮らしていました。そのため人口はあまり増えず、皆が狩猟採集で食糧を確保しています。

部族Aと部族Bが武力衝突したとき、勝者は部族Aであることは容易に想像できると思います。

これを大きな視点にすると、

  • ヨーロッパの人達=部族A
  • アメリカ先住民や、南米アステカ帝国・インカ帝国や、オーストラリアのアボリジニーたち=部族B

となるのです。

ヨーロッパの人達が他の地域を征服していった直接的な原因は「銃・病原菌・鉄」ですが、銃や鉄を生み出せたのは、「農業を行い、食料生産・備蓄を発展させたこと」にあるということが分かります。

第2部 食料生産にまつわる謎

本書の魅力はどんどん疑問を深く掘り下げていくことにあります。

第1部で「農業を行い、食料生産・備蓄を発展させたこと」が原因と分かりましたが、それでは、なぜヨーロッパの人達は食料生産を始めたのだろうか?というのが第2部のテーマです。本書で一番面白かったのは第2部です。

なぜヨーロッパの人達は食料生産を始めたのだろうか?の要因はいくつかあり、主に以下の点です。

  • 食料生産に適した植物の野生種が自生していた(小麦など)
  • 狩猟採集よりも農耕の方が効率的に食料を生産できた
    • 気候や土壌、農業に向いた植物、食料となる動物の減少など
  • 家畜になりうる大型哺乳類が多く生存していた
  • ユーラシア大陸は東西に長いため、気候が似た地域が多く、農業に関する知識や品種が迅速に伝達された

ただし、初期の農業はヨーロッパというより、現在のイスラエルあたり、メソポタミア文明と呼ばれてた周辺で起こっています。それがヨーロッパやアジアに伝わりました。中国でも独自に農業が起こっており、ヨーロッパなどとの交流もあり相互に発展していったようです。

一方で、南北アメリカ大陸やオーストラリアでも農業は起こったものの、あまり発展せずに、後のヨーロッパ人の侵略・征服を受けることになります。これは上に挙げたようなユーラシア大陸で農業が発展したのとは逆になるからです。つまり、

  • 食料生産に適した植物の野生種が自生していなかった
    • とうもろこしがありましたが、その野生種は実が小さく、大した食料にはならなかったとのこと
  • 狩猟採集の方が農耕よりも効率的に食料を得られた
  • 家畜となりうる大型哺乳類がほとんど居なかった
  • 南北アメリカ大陸は縦に長く、北アメリカやオーストラリアは砂漠に分断されているため、農業に関する知識や品種が伝達しにくかった

ということです。

第3部 銃・病原菌・鉄の謎(途中から下巻に続く)

上巻では第3部の一部として、第11章の家畜がくれた死の贈り物が収録されています。

ヨーロッパ人は数々の伝染病にさらされてきたことによって、それに対抗する遺伝子や抗体を身につけました。

一方で、アメリカ先住民や、南米アステカ帝国・インカ帝国や、オーストラリアのアボリジニーたちには伝染病はあまり羅患していませんでした。そのため対抗する遺伝子や抗体を持っていませんでした。

ヨーロッパ人が新大陸(南北アメリカや、オーストラリア)に到達した時、病原菌も伝えました。伝染病は猛威を振るい、戦争よりも多くの死者が出ました。これはヨーロッパ人が新大陸を征服する大きな要因になりました。

ここでのメインテーマは、「なぜヨーロッパ人たちは病原菌を保菌し、それに対抗する術を身に着けていたのか」です。逆に言えば「なぜ新大陸の人達は病原菌を保菌せず、それに対抗する術を身に着けていなかったのか」となります。

これの答えは家畜にあります。多くの病原菌は動物から人間に伝染ることで大きく進化し、人間という宿主の病気の原因となったためです。

ヨーロッパをはじめとしたユーラシア大陸には多くの家畜がいましたが、新大陸には家畜はほとんどいませんでした。これが病原菌による戦いの勝敗を分けたのです。

個人的な感想

直接的な原因「銃・病原菌・鉄」を題名で示しておきながら、さらなる要因になぜ?なぜ?と深堀して迫っていくところが非常に面白かったです。

歴史を学ぶとはかくあるべし!という感じです。上巻を読み終えたので下巻も読みたいと思います。

一方で、Amazonレビューを見ると、本書の内容の正確性や、著者の推論の多さについての批判が見受けられました。

学がないので本書の正しさがどのくらいなのかは、私には分かりませんが、こういう系統の書籍は100%正しくするというのは無理だと思います。結局は色々な情報にあたって自分なりにどれが正しいのか整理整頓していかなければなりません。ということで、”1つの説”として本書を受け取り、他の情報ソースも総合して判断していくのが正しいと思います。

という感想でした。

歴史、世界史、それも紀元前の出来事に興味がある方はぜひ。

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